寝酒が習慣になってしまい、量も二合以上になった人は一度きっぱりとやめ、酒なしで眠る習慣をつけましょう。
「お酒を飲まないと眠れないのですが、睡眠薬とお酒とどっちがいいですか」
こんな質問をよくうけます。
どっちも推薦するほどよいものではなく、できれば何も飲まないのにこしたことはないのですが、どうしてもといわれると、盃一、二杯で寝つかれるならお酒のほうがよいでしょう、と答えることになります。
お酒は、いわゆる薬よりは自然に近いものでしょう。
ナイトキャップといって、枕元においてチビリチビリやる人もいます。
テレビの深夜番組などを見ながら、そのうち眠くなって寝てしまいます。
ところで、お酒は毎日飲んでいるとだんだん強くなります。
それは肝臓にMEOS(メオス)というアルコールを分解する酵素がだんだん増えてくるからで、この酵素は飲めば飲むほど増えてきます。
つまり後天的に、訓練によって増える酵素だということです。
この酵素が増えますと、アルコールを分解する能力がそれだけ増える、だからよけい飲める、というわけでだんだん酒に強くなっていきます。
寝酒を最初から二合も三合も飲む人はいないでしょう。
はじめはおとなしく、つつましく、盃一、二杯であったのでしょうが、それが日を重ねるごとに効かなくなり、量が増えて二合になってしまうこともあります。
こうなると寝るためのきっかけにすぎなかった酒が、今度は酒を飲むことが目的となり、飲まないではいられないということになり、だんだん深みにはまっていきます。
こうなったら、きっぱりと酒をやめることをおすすめします。
何もしないで寝るのです。
しかし、どうしても寝つけなかったら軽い睡眠薬を一錠ぐらい飲むのもしかたないでしょう。
こうしてお酒を断ちますと、増えたMEOSという酵素はまた減っていきます。
そして元と同じ量に下がっていきます。
そうして1ヶ月たってから再びお酒を飲んでみますと、増えた酵素はすっかりなくなっているので元と同じ酒量にもどり、盃一、二杯でまた、ぐっすり眠れるようになります。
このように、飲んでいるうちに慣れて量が多くなってしまうことは薬にもあります。
たとえば睡眠薬が、はじめは一錠で効いていたのがだんだん効かなくなり、二錠になり三錠になり、そのうち三錠でも眠れないということになりますが、似たような経験をされた方も多いことでしょう。
こういう場合は、まったく別の薬に代えてしまうことです。または薬に頼らないようにするという強い意志をもつことでしょう。
そうしないと、そのうち手のひら一杯の何十錠という薬を飲まないではいられないという泥沼に陥ってしまいます。
お酒も、この睡眠薬と同じようなものです。飲んでいるうちにだんだん量が増えます。
お酒を分解する能力は二倍ぐらいには増加するといわれています。
しかし、肝臓の力が二倍になったということではなく、ただMEOSによってアルコールをアセトアルデヒドにする働きが二倍になっただけで、今度はたまってきたアセトアルデヒドが肝臓をいためることになります。
ですから、お酒の量が増えれば、それだけ体にはよくないのだと思って下さい。
ナイトキャップはあくまでもキャップ程度であり、ナイトガウンやナイト綿人れにはならないように。