肝臓の病気で吐血した場合には…

なぜ、食道の静脈が肝臓と関係があるのでしょうか。

食事をすると、食べたものは胃から腸に入って行って、そこで吸収されます。

吸収されたものは、門脈という血管を通ってすべて一度は肝臓に集まります。

ところが、肝硬変になると、肝臓は硬くなり、門脈も通りが悪くなってうまく流れなくなってしまいます。

しかし、それにはお構いなしに腸から血液がどんどん流れてきますから、肝臓の手前で血液がたまり圧も高まってきます。

これを門脈圧完進症といいます。

門脈内に血液がたまりにたまって圧が高まってくると、そのままではパンクしてしまうので、あふれた血液は正規のルートを通って肝臓に入るのをあきらめて、別のルートを通って流れるようになります。

肝臓の手前から流れる別のルートというと、肺臓へ行ったり、食道へ行ったり臍から腹壁へ流れたり、肛門へ流れたりするわけです。そこで、肺臓へ行砂ば牌臓がはれ、食道へ行げば食道静脈瘤ができ、臍から腹壁へ流れれば腹壁静脈が腫大してメドゥーサの頭となり、肛門へ流れると痔になるということです。

そのうちの一つが食道静脈瘤で、これが破裂すると大出血することになり、そのために命を落とすこともあるのです。

では、この破裂を予防するにはどうしたらよいでしょうか。

一般的には内視鏡的に硬化療法を行います。

肝硬変の人は常犬自分の食道静脈瘤がどの程度であるかをみてもらっていたほうがよいでしょう。

肝臓の悪い人に「食道と胃のレントゲンの透視をしましょう」または「内視鏡の検査をしましょう」というと、「私は胃には何の症状もありません」とけげんな顔をされることがありますが、食道の状態をみるのが目的なのです。

肝臓と食道とは大いに関係があります。

そして、食道静脈瘤がいま、出血しやすいのか出血しにくいのか、ということをさらに最終的に判定するためには、食道の内視鏡がどうしても必要なのです。

レントゲンで静脈瘤がなければ大丈夫なのですが、もし静脈瘤があったりまたはその疑いがあったら、ぜひ内視鏡の検査を受けてください。

これはどうしても必要なものであり、これでなくては判定できません。

内視鏡は昔は胃カメラといっていましたが、カメラは実物をみることはできず、メクラ打ちに写真をとるだけですが、内視鏡(ファイバースコープ)では、みながら写真をとれるという利点があります。

内視鏡は苦しいからいやだ、というのは食わずぎらいのようなもので、最近はスコープも細くやわらかくなっているので楽に飲むことができます。

〈実話〉男性 57 会社員

肝臓が悪く、胃潰瘍もあって、私か外来で治療をしていた人です。
ある日、奥さんから電話で「主人が血を吐きました。洗面器1杯以上もあります」とオロオロした声で急報があり、救急車でただちに入院してもらいました。

緊急内視鏡の結果、食道静脈瘤の破裂と診断されました。

入院後、直ちに輸血を行い輸液もして血圧を保ちチューブを食道内に入れてとりあえず止血しました。
翌日、内視鏡で出血部位を確認の上、硬化療法を行ない二度と出血しないように処置をしました。

硬化療法は、最近は輪ゴムのようなもので簡便に止血する方法や、直接硬化剤を注入する方法などがあり、治療効果がより確実となりました。

やがて患者は、元気をとりもどしました。

死の一歩手前から生き返ったというのは、このことでしょう。

プロフィール


サイト管理人:藤田 正
某病院につとめる中年男性。
みんなで楽しくお酒をのむことが大好きです。

お酒にまつわるちょっと怖い話や、
安全なお酒の飲みかたを紹介させていただきますので、
ビールを片手に楽しく読んでいただけたらと思います。